暮らしの朝市が育む、“持続可能な暮らし”の土台
暮らしの朝市は、「月に一度のマーケット」という単位を超えて、「小さな経済が回る地域の土台」「誰かの暮らしとつながるコミュニティ」として成長してきました。
数字で見ることで、見えにくかったこうした”いとなみ”の「厚み」が浮かび上がります。そしてこれからも、続けることで地域に「無理のない小さな経済」を根づかせ、持続可能な暮らしを共に作っていきます。
朝市から生まれたもの
暮らしの朝市は、単なる「売る」「買う」の場所ではありません。
出会い、会話、小さな挑戦、
そしてそこから広がる暮らしや仕事。
朝市という場から、
たくさんの新しい”いとなみ”が
自然と生まれてきました。
ここでは、朝市を通じて生まれた
さまざまなつながりや挑戦、
暮らしの変化を紹介します。
KURASHI-NO-ASAICHI
REPORT PROJECT
10年を超えて続く暮らしの朝市。
そこから生まれた営みやつながりの変化を
見つめなおすため、1年をかけてインパクトレポートを制作していきます。
出店者、来場者、地域など、関わるすべての人と価値を共有・可視化していく取り組みです。
初回となる今回は、アンケートやヒアリングを通じて見えてきた出店者のまなざしに焦点を当てました。 継続して出店を続ける人、新しい挑戦を始めた人、地域に根ざして暮らす人――その声のなかには、 「売る・買う」を超えた人とのつながりや、自分らしい働き方・生き方のヒントがあふれています。
※PDFが開きます
「暮らしの朝市」は、単なる「モノの売り買いの場」を超えて、地域の中で人と人がつながり、誰かの手から生まれたものが、別の誰かの暮らしを支える“小さな経済圏”を育んできました。
毎月、地域の生産者・作り手が集まり、自分の手でつくったものを自分の言葉で届ける。その営みが続いてきたからこそ、ここには「ただ買う・売る」だけではない、人と人との関係性の中にお金が巡る、あたたかな経済の循環が生まれています。
今回のアンケートと集計からも、暮らしの朝市が育んできたこの“地域の経済圏”の広がりと持続可能性が、具体的な数字で見えてきました。
暮らしの朝市は、「月に一度のマーケット」という単位を超えて、「小さな経済が回る地域の土台」「誰かの暮らしとつながるコミュニティ」として成長してきました。
数字で見ることで、見えにくかったこうした”いとなみ”の「厚み」が浮かび上がります。そしてこれからも、続けることで地域に「無理のない小さな経済」を根づかせ、持続可能な暮らしを共に作っていきます。
「暮らしの朝市」は、誰もが「こうしなきゃいけない」ではなく、「自分らしい働き方」「自分らしい暮らし方」を見つけていける場です。家族や子育て、他の仕事と両立しながら無理なく続けられるだけでなく、出店を通じて新しい一歩を踏み出す人も少なくありません。
今回の調査では、朝市を通じて生まれた「自分らしい暮らし」の実践が、具体的な数字で見えてきました。
出店をきっかけに、231名の出店者が「新しい価値観を発見した」と回答し、169名が「自己肯定感の向上」を感じていることがわかりました。また、約3割が「暮らしの安定」や「仕事とプライベートのバランスの変化」を実感しています。
暮らしの朝市は、単なる収入源ではなく、自分らしい働き方や暮らしを見つける場にもなっていることがデータから見えてきました。
最も多かった出店理由は「自分の作ったものを直接販売したい」(268件)、「お客さんとの交流を楽しみたい」(267件)。さらに「朝市の想いに共感した」(227件)という声も多く、売上目的だけでなく、“自分の暮らしを伝えたい・共感したい”という動機が大きいことが分かります。
暮らしの朝市は、ただモノを売る場所ではなく、「誰かに届ける」喜びを実感できる場として機能しています。
修行などの経験もなく、独学で二足のわらじではじめた活動でしたが、朝市で毎月毎出店させてもらうことでちょっとずつ自信がつき、おにぎりやさん1本でやってみようと実店舗までたどり着いたのは、間違いなく朝市のおかげだと思います。続けることの大切さは朝市から学びました。
また、縁もゆかりもない愛知県で友達らしい友達もできず何年も過ごしてきましたが、朝市を通してたくさんの出店者仲間と出会い、なかには、仕事以外の時間も共有できる友達に出会えたことは財産だと思います。
わたしの場合、これが一番大きかったかもな〜
(出店者:おにぎりやさん)
暮らしの朝市は、「売る・買う」のその先、一人ひとりの「こう生きたい」が形になる場
として、続いています。毎月の朝市が、ただの「イベント」ではなく、出店者一人ひとりの「自分らしい暮らし」を支え、ともに育てているーー。数字とエピソードを通して、その「静かだけど確かな変化」が見えてきました。これからも、誰もが自分らしい暮らしを描ける社会へ。暮らしの朝市は、その一歩を支える「小さな始まりの場」であり続けます。
「暮らしの朝市」は、ただ出店するだけでなく、「試してみたい」「変えてみたい」という想いを実現できる“実験の場”です。出店をきっかけに商品開発をはじめたり、他の出店者とコラボしたり、イベントやメディアに声がかかるなど、新たなチャレンジへとつながっています。今回の調査でも、出店経験が次の活動へと発展している実例が多数寄せられました。朝市が、個人の挑戦を受け止め、応援し合える関係性の中で育まれていることが、改めて見えてきました。
2025年度、新たに暮らしの朝市に加わった出店者は111組にのぼりました。
「何かをはじめてみたい」「自分のつくったものを届けたい」――そんな思いを胸に、一歩を踏み出した人たちが、毎月の朝市に新しい風を吹き込んでいます。
朝市は、経験の有無に関わらず、誰でも挑戦できる“はじまりの場”。常連の出店者たちに見守られながら、少しずつ場に馴染み、リピーターとつながっていく。
この111という数字は、今年も多くの“挑戦”が芽吹いた証です。
アンケートによると、出店をきっかけに「イベントへの出店依頼が増えた」「新たな商品開発に挑戦した」といった声が多く寄せられました。中には「他の出店者とのコラボレーション」「新しい販路の開拓(オンライン販売や卸など)」「メディアへの掲載」といった、思いがけない広がりにつながった人もいます。
「暮らしの朝市」は、ただモノを売る場ではなく、自分のやってみたいことを試し、次のステップへとつなげていける“入り口”のような存在です。小さな挑戦が暮らしを動かす。そのきっかけが、ここには確かにあります。
暮らしの朝市に出店して新しいお客様も増え、暮らしの朝市はもちろん、他のイベントや出展へもお越しくださったり、出店者様との交流の中でコラボ商品を作らせていただいたり、イベントに誘っていただいたりと初出店の時は高校を卒業しこれからの不安もたくさんありましたが、たくさんのお客様や出店者様とつながることができ、わたしが挑戦するきっかけや学びのきっかけになり、“わたしとくらす”としても、私自身も成長できる場となりました。
(出店者:わたしとくらす)
暮らしの朝市は、「やってみたい」が試せる実験の場。出店をきっかけに、商品開発やコラボ、新しい販路の開拓など、新たな挑戦に踏み出した出店者が多くいます。小さな一歩が次の活動につながり、自分の暮らしや働き方を少しずつ変えていく。朝市は、そんな変化のはじまりを応援する場所として、今日も続いています。
暮らしの朝市では、畑で採れた野菜や手づくりの品々が、出店者の言葉とともに丁寧に手渡されます。モノを介して人が出会い、会話し、信頼が育つ場所です。出店者同士のコラボレーションや、来場者との交流から、新たな地域のつながりが自然と生まれています。調査では、コラボ件数や交流エピソードから、農や手仕事を通じた助け合いの文化、そして“地域の仲間”としての関係が、多くの具体的なかたちで可視化されました。
暮らしの朝市では、出店者同士の自然なつながりから、「共同出店」「新しい商品開発」「別イベントの共同開催」などのコラボが生まれています。
出店という“共通の営み”を通じて、信頼関係が育ち、協働が広がっていく様子が印象的です。
アンケートでも「朝市で出会った人と一緒に新しい活動を始めた」という声が複数あり、“助け合い”が生まれる土壌があることが見えてきました。
「暮らしの朝市」では、ただモノを売るだけではなく、出店者と来場者が直接会話し、関係が生まれることが大きな魅力のひとつです。アンケートでは、「お客さんとSNSでつながり、イベント以外でもやりとりが続いている」「ファンができて、他の場所への出店も応援してくれるようになった」などのエピソードが寄せられました。中には「出店をきっかけに移住を決意した」「朝市での出会いから地域でお店を開いた」という声もあり、朝市が“地域との入口”として機能していることがうかがえます。
こうした小さな関係の積み重ねが、地域に根ざした助け合いや、新しい営みへとつながっているのです。
東別院の朝市に12年前ぐらいから出店し続けているため、最初のころの常連さんのお子さんが大学生になって彼女を連れてきたり、キッチンカーを始めたいと相談にきた青年が、小学生の頃にお母様と一緒に東別院で自店のピザを食べてたなどの話を聞くと、歴史が刻まれれはじめ、そこに文化が生まれてきてるのが実感できうれしく思う。
(出店者:石窯PIZZA屋台boccheno)
出店者と来場者が顔を合わせ、言葉を交わすことから生まれる関係性。暮らしの朝市は、地域と人とをゆるやかにつなぐ場として、多くの出店者にとって“暮らしの拠点”になりつつあります。
ここから始まるつながりが、新たな暮らしや挑戦を支えています。
「暮らしの朝市」は、月に一度の営みを重ねることで、出店者と来場者の間に少しずつ信頼が育まれてきました。長年出店を続ける人が多く、常連のお客さんとの関係性が、安心感や文化のようなものをつくり出しています。調査では、継続出店率の高さや、常連客の存在が出店者の励みになっている実例が多数見られました。季節や天候に左右されながらも続けてきたその姿勢が、信頼を生み、地域に根ざした小さな経済の一端として機能していることが、数字とエピソードの両面から明らかになりました。
暮らしの朝市では、2023年度に84.4%の出店者が継続して出店し、次年度も「出店を続けたい(9〜10点評価)」と答えた人も84%にのぼりました。また、10年以上出店を続けている出店者も全体の19.4%。月に一度の営みが、地域の風景となり、暮らしの一部になっていることが伺えます。
「毎月ここで会えることが励みになる」「お客さんの顔を見ると、自分のペースで頑張ろうと思える」――そんな声が積み重なり、朝市は“売る・買う”を超えて、信頼と営みの関係性を育む場として続いています。
暮らしの朝市の魅力のひとつが、常連さんとのつながりです。
アンケートでは、他のマルシェに比べて常連が多いと感じている出店者が76.4%。さらに、98.9%のお店が「常連さんがいる」と回答し、その平均人数は13人(中央値10人)でした。
エピソードでも、「毎月顔を見せてくれる」「お子さんの成長を一緒に見守ってきた」など、出店者の11.2%が常連さんとの関係について語っています。
“また来月ね”“楽しみにしてたよ”という言葉が飛び交う朝市の風景には、ただの買い物ではない、人と人の関係性の積み重ねがあります。
げんこつ飴製造・販売を始めた当初、出店の仕方も分からず、とても小さな朝市やフリーマーケットに出ていました。
その頃、常連のお客様から 東別院てづくり朝市 の事を教えて頂き実際に見に行きましたがレベルの違いに「自分には出店は到底叶わない…」と半ば諦めていました。
その後、以前から東別院に出ていた井川さんからのお勧め・推薦も頂き、出店の機会を頂けることになりました。
初出店時に以前の常連のお客様から「絶対ここ(東別院)に出られると思ってました!」と仰った時は感動しました。
(出店者:めぐみ飴本舗)
「毎月ここに来るのが楽しみ」と声をかけてくれる人がいること、それに応えるように商品や接客を磨き続ける出店者がいること。
それは単なる“販売”ではなく、人と人との信頼関係の中で循環する、あたたかな営みです。
朝市が長く続いてきた理由は、売上や規模だけでは語れない、こうした関係性の積み重ねにあります。
今回のレポート(Vol.01)は、代表インタビューと出店者アンケートをもとに、出店者に起きた変化に焦点を当ててまとめました。暮らしの朝市をきっかけに生まれたインパクトが、どのように広がり、誰かの暮らしや地域とつながっているのか。そんな日々の営みの価値を見つめなおすきっかけになれば幸いです。