代表 飯尾うららが考える、暮らしの朝市

飯尾 うらら
Profile
1979年愛知県生まれ。大学卒業後理学療法士として病院勤務するも、地に足のついた生活を求め、結婚と同時に農的暮らしをスタートさせる。 愛知県津島市で、体験農園みんパタプロジェクト、かき氷と沖縄そばの店INUUNIQ VILLAGEを運営する傍ら、暮らしの朝市を主催する。東海地方を中心とするマルシェイベントのコーディネーターとしても活動。3兄弟(14歳、9歳、6歳)の母親業も同時進行中。

「暮らしの朝市」を始めたきっかけは、すごく個人的なものでした。いい大学に入って、いい会社に入ることが幸せだと思っていたけれど、私はその生き方がどうも苦しくて。そんな中、バックパッカーとして世界を回った時に、各地のマーケットで生き生きと自分が作ったものを販売する人たちを見て、「こんな暮らしがしたい」と強く思いました。
当時私は畑を耕し、育てた野菜を自分のカフェで料理したり、販売したりしていました。そんな時に甚目寺観音でご縁をいただき、仲間に声をかけて朝市を開いたのがはじまりです。一生懸命育てた野菜をお客さんが喜んでくれたという喜びは今でも忘れられません。
一過性の流行りに乗らず、日常を大切にする場にしたいという思いから、その当時流行っていた「マルシェ」という言葉を使わず、「朝市」という名前にしました。晴れの日のイベントやお祭りではなく、自分や仲間が「こう生きたい」という願いを持ち寄れる、暮らしの延長にある場にしたかったんです。

暮らしの朝市は、農家だけでなく、パン屋、お菓子屋、キッチンカー、洋服や器などを作る人、お店を持つ人、持たない人・・・多種多様な生き方の人達の集まりです。これは大学卒業後に住んできた沖縄のチャンプルー文化が影響していて、できるだけ沢山のジャンルの人たちが混ざり合うように意識してきました。一つの色や思想に偏らないことで多種多様な人を受け入れる場が作れると思っています。
その中には子育て中のお母さんも沢山いました。私も、自分の子供三人をおんぶしながら運営してきたので、「子育ても暮らしも仕事も、全部一緒に」という感覚が常に根っこにあります。子育てしながらでもお店を出せるように、開催時間を短くしたり、キッズスペースやおむつ替えスペース、授乳スペースには力を入れてきました。それが結果、みんなが無理なく続けられる持続可能な市につながっています。
私自身も野菜を販売する出店者であり、運営をする立場でもある。出店者もお客さんになり、お客さんは出店者になる。関わる人たち皆でお互いを育て合い、対等な関係性を築くことを大切にしています。

暮らしの朝市が目指しているのは、単にモノを売り買いする場所ではありません。自分の足で立ち、つながり、助け合いながら自立して生きる仲間を増やすコミュニティでもあります。
野菜を育てる人がいて、料理する人がいて、それを食べる人がいて。そうやって、みんなの営みがつながることで、暮らしがちょっとずつ豊かになっていく。そういう優しい社会が広がっていくことを願っています。最近は、「自分らしい仕事や暮らし」を模索している若い人たちの「やってみたい」を応援したいとも思っています。
この朝市が、誰かにとって「自分の暮らしを取り戻す」きっかけになったら嬉しいし、「どう暮らしていきたいか」を考え続けられる場にしたい。たくさんの人が「暮らし」を持ち寄って、まざり合いながら、支え合う。そんな場を、これからもみんなと一緒に育てていきたいと思っています。